自主再建か転廃業か
―金融円滑化法の期限切れからまもなく1年目を迎える今―
金融円滑化法は、リーマンショック後の不況への時限立法として2009年に施行され、経営の悪化した中小企業に借金の返済猶予を認めてきました。2度にわたり延長され、ついに今年で打ち切りとなりました。中小企業の約1割の30万社から40万社が救済されました。打ち切りになると金融機関が一斉に貸し渋りや貸し剥がしをして、その結果倒産する企業が続出するのではと危ぶまれていました。
そういう事態を避けるため、金融庁は事前にメッセージを出しました。「金融機関が、貸し付け条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきことは、円滑化法の期限到来後においても何ら変わりません。」と。これで一応胸をなでおろしした方が多かったと思います。一方、金融機関に対しては、「金融検査・監督の目線やスタンスは、円滑化法の期限到来後も、これまでと何ら変わりません。」
とし、不良債権の定義は恒久措置としました。本来、貸出し条件等を変更すれば不良債権として貸し倒れ引当を積み増ししなければなりません。これによって金融機関の財務内容が悪化してしまいます。そこで貸し剥がし等が起きてしまうのです。
円滑化法では、リスケ(貸出し条件の緩和)の前提として経営改善計画を立てて、5年以内に返済が再開できる見込みのあることが要求されていました。経営の悪化がリーマンショックなどによる景気変動によるものであるから救済しようというものです。しかしながら、その判断は困難なことから、本来であれば再建の見込みがなく転廃業を余儀なくされていたはずの企業も5万社から6万社含まれていると言われています。また、返済を猶予されたにもかかわらず、経営革新が進まない企業が大半ではないかと思われます。
円滑化法の期限切れに伴い、国の総合的な対策が打ち出されました。一つは、独力で経営改善計画の策定が困難な小規模企業に対して、認定支援機関(税理士、弁護士等)を設けて計画策定やフォローアップを支援します(予算420億円)。私も認定申請しています。二つに、中小企業の資金繰りに万全を期します。セーフネット貸付(事業規模5兆円)、複数の借入債務を一本化し返済負担軽減を図る借換保証(事業規模5兆円)。三つに、全国に中小企業支援ネットワークを構築し、連携して中小企業の経営改善・事業再生を支援します。
返済猶予はいつまでも続きません。経営改善出来ない企業は転廃業もやむを得ないのです。期限切れを機会に、外部の専門家や政策の様々な支援を受けて、
今こそ、経営改善、経営革新に取り組まなければならないと思います。